ラビリンス

大阪に“鶴橋”という町がある。

生野区と東成区に跨がり近鉄線とJR環状線の交差するわりと大きな駅だ。近鉄沿線っ子の僕はたまに利用していた。今は換気が良くなったのか薄れはしたが、電車の扉が開くと焼肉のいい匂いが漂っていて、改札を出るとチョゴリや寝具、キムチの店舗が密集した市場があり、異国情緒溢れる、アジアの匂い。さらに東へ進むと食べ物店舗が多くなり魚介卸店街に行き着く。迷路のようになっていて初めてのひとは迷うでしょう。

 

Kポップブームとやらで観光客も増え賑やかになったが、昔は少し近寄りがたい場所でもあった。

この地域には在日韓国·朝鮮人が多く住んでいる。高校生の頃は“朝高”を過度に怖れていた。「大阪朝鮮高級学校

 

僕が通っていたのは工業高校で、当時としては珍しく通名(日本名)を使わない学校であった。“金”“韓”“高”…名字の生徒も多くいたので「知ってはいるが…」程度。実状や歴史を解っている訳ではないので“過度の怖れ”になったのだろう。一人ひとりと付き合えばそんなことはない、怖れる存在ではないのはすぐ解るのだが、「無知ゆえの罪」ってことを考えさせられる。

 

数十年前、在日韓国人の友人の日本国籍取得の“帰化申請”を手伝ったことがあった。なんとも面倒な書類提出が山のように必要で、自筆で書き起こされなければならないとか、申請者も読めないハングルで書かれた家族の歴史を記した文章の書類がいるとかで、まあ、気力が削られる。途中で止める人もいるという。

「嫌がらせ」にも感じる作業を経て長い時間をかけて彼は“日本人”になった。

「国籍を変える」という発想をしたことがない者としては、作業の苦労に加え精神的苦悩が気になる。生涯にわたり「母国を裏切った」という自責の念に苛まれないだろうか?と…

 

と、これは閉鎖的な国の発想かも知れない。“島国根性”と揶揄され“イナカモノ”的狭量さを育んだ風土。

日本は世界の僻地、文化果つるところ。

濃縮されて拡散されない地政になったのかも、ガラパゴス

 

「“某国”や“某国”に生まれなくて良かった」と思うこともしばしばあるが、なんとも寛容さのない国だとも思う。よそ者に対する異様な怖れ、畏れ。そんなコンプレックスが僕を洋楽に向かわせたか。

 

[ジョン·レノン]は

「国境なんてないって“想像”してごらん」と…

国境を引く、迷路が拡大する、

♪迷い道クネクネ。