On The Corner

楽器の電化は当然の流れ、ロックやファンク、現代音楽でも実験、実証はされていて、ジャンルのない[マイルス]もいよいよ取り掛かる。一部の石頭連中からは批判的だったが、そんなもん「So What?」だ。

[キース·ジャレット][チック·コリア]にフェンダーローズ(エレピ)を弾かせ、エレクトリックギター[ジョン·マクラフリン]を起用したアルバム『ビッチェズ·ブリュー』は衝撃的だ。地を這うバス·クラリネット[ベニー·モウピン]、祝祭的なパーカッションが、音楽の厚さ、熱さを盛り上げる。

フュージョン”の源泉的見方をされるが、全然違う。きっかけにはなっただろうが他の凡庸さ、軽薄さが浮かび上がることになった。

 

ここを起点に[マイルス]約5年の宇宙への旅だ。個人的には最高に好きな期間で、「音楽の全てがある!」と思っている。“エレクトリック·マイルス”と呼ばれ、自身のトランペットはエフェクトして歪み、パーカッション[ムトゥーメ]、エレクトリックギター[ピート·コージー]([サン·ラー·アーケストラ]に居たの?、[ジミ·ヘン]“が”追っかけしてたの?)の超個性をはじめ、“タブラ”や“シタール”のインド楽器なんかも混ぜて“カオス”を創出した。

日本公演『アガルタ』『パンゲア』のライブアルバムを残し一時引退となったが、「そりゃ、そーなるやろ」と思うほど超濃密な5年である。

 

ミストーンもあるし、音数が少ない…若き天才[クリフォード·ブラウン]と比較されたりと批判的な声も少なくなかっただろうけど、確信を持って“我が道”を進んだ。

「カッコいい“ニグロ”、“ニグロ”はカッコいい!」

「俺は黒人だ、だからどうした?」

「悔しかったら“ニグロ”になってみろよ」と…

 

曲がり角で迷ったらいつも…“マイルストーン”になる[マイルス]。