分離不可

ジャズ聴き始めの頃、“名盤100選”みたいなガイド本を頼りに盤を選んでいたが、その中にあったベーシストのリーダーアルバムが

『直立猿人』

『ミンガス·プレゼンツ·ミンガス』だ。

どちらもジャズ史に残る名盤として必聴とのこと。まあ、その後にわかることだが、[チャールズ·ミンガス]に駄盤はないわな…

ベーシストのリーダーアルバム、なかなか数が少ない印象で、あってもなんか“ご褒美”的な、言葉は悪いが“ついでに録っとけ”的な…名前を冠しても売れなかったんでしょうな、あまり無い。

その点、[チャールズ·ミンガス]は唯一といってもいいほどリーダーアルバムを出していた。やはり、そのベースプレイは強力に聴くものを惹き付ける。「グイグイ」という表現がピッタリで、ミンガス後は他のベーシストが物足りないと感じてしまう。

アレンジにどれ程関与したかは知らないが、『直立猿人』でのアプローチはビッグバンド並みの厚みで凄い迫力なのだ(実際はクインテット)。どうしたらこうなるのか?

さて、僕は『ミンガス·プレゼンツ·ミンガス』を先に、何か微細な違和感を感じながら聴いた。全4曲、曲前にナレーションが入る…1曲目『フォーク·フォームズ·No1』(超かっこいい!)[エリック·ドルフィー]のアルトサックス、[テッド·カーソン]のトランペットの絡み方…2曲目『フォーバス知事の寓話』の歌詞付プロテスト色…ジャズにしては確かに少し「あれ?」だが、そんなんじゃない…ドラムだ…ドラムの音が“生々しい”のだ。録音の問題かも知れないが、妙な耳の残り方をする。プレイもこれまた不思議、つんのめってる感じがするのにちゃんと“スウィング”してる!相容れないハズなんじゃないの?

当時はまだドラムを叩いていた僕は、パニックにも近い状態、「訳わからん!」。

“スウィング”の感覚を捉えられずに苦闘していた。“体得”するしかないのに、頭で考え「黒人にしかできない…」。無理な理由を探して…止める理由を探して…

 

[ダニー·リッチモンド]

決してビッグネームではない。しかし、ミンガスは必ず彼を指名しプレイした。欠かせない相棒として。御大の下、自由に暴れて支えた。ミンガス死後[ジョージ·アダムス=ドン·プーレン·カルテット]の一員として[ライブ·アンダー·ザ·スカイ]でその姿を見た時、プレイの健在ぶりが確かめられ嬉しかったが…

 

実は僕にとって『ミンガス·プレゼンツ·ミンガス』はA面2曲の印象しかない。「お腹一杯」になってしまっているのだ。ピアノレスカルテットの“疲れる”濃密な音…それでもやっぱり名盤だ。