“真理”オタクの覚悟

以前勤めていた職場の施設内に小さな書店があって、定期講読している雑誌などをそちらで取り寄せてもらい購入していた。また、不定期で気になる本なども作者やタイトル、出版社を書いて取り寄せてもらい常連顔して入手した。

難しそうな本を多く注文し、「本好き、インテリ」と思われたいと考えての事だが、店員の女性に気に入ってもらいたい“下心”がほとんどだった。

当然、本は手に入っても…まあ、貧乏性なせいか一応読んではみるも、内容は「ちんぷんかんぷん」で、9割以上解らない。それでも懲りずに注文を繰り返し、解らない本が増えていくだけだった。その彼女はしばらくして結婚を機に退職したが…青春とはバカですな。

 

フランスの哲学者、思想家に括られる

[シモーヌ·ヴェイユ]

という人がいるのだが、どうも彼女、他人の不幸への感受性が鋭く強く、中国で大飢饉のニュースを知り泣いたりして「世の中の不幸は自分のせい」と思ってしまうような人だった。

1909年生まれ、激動の時代。元々身体が強くもないのに、そんな心では身が持たない…他者の苦しみを知るため進んで過酷な工場で働き、戦場にも行き、「フランスの人は食べてないから」と、粗食になり、給料の半分を労働者の組合に寄付したり…と生活はかなり苦行化する。最期は衰弱しきって運びこまれた病院で、手術も食事も拒否し自殺と記載された。34年の生涯。

死後は[カミュ]や[サルトル]の実存主義派らにも取り上げられたらしいが。

また、「真理に近づきたい」との思いも強烈で、生活が苦行下にあっても思索追求し続け、晩年は“奴隷の宗教”キリスト教に接近した。きっかけは、ポルトガルで“聖歌の響き”を耳にして…らしい。

 

若い頃、同時期にソルボンヌで学んでいた[ボーヴォワール]が綴るエピソードに…

シ「世界で重要なのはただひとつ、あらゆる人々に食べ物を与える革命だけだ!」

ボ「問題は人々の幸福を作り出すことではなくて、彼らの生活に一つの意義を見いだすことだ!」

シ、一瞥して「あなたが一度もおなかをすかしたことがないっていうことがよく分かるわ」

なんか…痛快だった。

比べる訳ではないけど、今では[ボーヴォワール]の知名度が遥かに高く昔話としての紹介ではあろうが、[シモーヌ·ヴェイユ]の視点がよく判る話として強く印象付いた。

着るものに無頓着で、いわゆる“自身の幸せ”よりも“真理”“弱者救済”を追い求め苦悩し続け、“利他”に尽くした短い人生…「こんな人もいた」と知った下心の読書。

 

おっと、ウチのにゃんズが騒ぎだした…夜食の時間だ。おそらく空腹知らずな彼らは[ボーヴォワール]的に、なんか”意義“を見いだしたかな?