ディープサウス

〔にしなり〕

大阪市の南西部、ディープサウス…

八尾で生まれ、小学5年時に柏原市という府内のベッドタウンへ。高校卒業後しばらく居たが、さて、そろそろ独り暮らしをの段階での問題は「どこに住むか?」だ。

まだまだ音楽中心時代で仕事、職業がさほど重要とは思っていなかった(今もその傾向が…呑気)ので、通勤などを考える必要はなく自由に住むべき地域を選んだ結果、西成付近となった。

大阪人でも避けがちな場所だけど、目的はあった。

[ブルース]

できるだけブルージーな町に暮らすこと、柄の悪い、貧しい人、弱者の中に身を置くこと。

何故ならば自分は“ブルース不足”と思っていたから…苦悩が足りない、もっと厳しい経験を積まねば…このまま凪の人生でいいのか?

本当のブルースフィーリングを掴むのだ!

本気で思っていた。

 

今思えば、酔っ払いの戯言、エゴが強いだけの身勝手な熱さだったが、後悔はない、ドレスコードがお洒落に縁のない俺にぴったり?の住み良いところ。

住人の加齢が進み、ちょっと前のファンキーさは薄れ、ますますブルージーになった。タバコを咥え(歩きタバコはダメよ!)ワンカップで寒さをしのぐ。

 

外国人バックパッカーが増えた。

新今宮駅前に有名なホテルが建った。

商店街に中華資本と思われるカラオケ飲み屋が増えた。相変わらず誰かの絶唱は朝から聴こえる。ブルースだ。

飛田新地は万博後も生き延びているのだろうか?

歓楽街ミナミの底の更に底、昔は釜ヶ崎(かまがさき略してカマ)と呼ばれ、[おかま]という語の語源との説もある、やくざ、芸人、世捨て人、しゃぶ中、娼婦、逃亡者、障がい者…あらゆるマイノリティを寄せて受け入れた一種のアジール(避難所)で、「来るもの拒まず去るもの追わず」の包容力が魅力なんだと暮らしてみるとわかる。少し塩素臭いが…

 

〔悪魔に魂を売った〕(ロバートジョンソン、クロスロード伝説気取り)つもりが売れていなかった。売買成立してなかったカッコ悪い人間も当然受け入れて貰えるのだ。

 

ブルースはディープサウスから滲み出す。