泰平の世

避妊、去勢手術後の猫は太るのが普通で(ホルモンバランスとかの関係)、室内飼いだと尚更運動量が足りない上に栄養価の高い食餌を飼い主が与えるので、ふくふくと丸くなる。

ルウはその意味でも“貫禄”をつけた。実に丸っこい。

一方モコは、細長いままだ。ルウに遊んで貰えずともソロで走り廻る。天真爛漫。

甘えるのも上手い。「撫でて~!」と言わんばかりに顔を頭をグイグイ押し込んでくる。長いしっぽで僕の顔をペシペシ。ボールを投げてやると走って取りに行き咥えて持ってくる、犬っぽい。トイレや風呂にはついてくる。分離不安症。

それを見るでもなく何とも冷めた態度で過ごすルウ。

甘え下手で、モコの前では近寄って来ない。甘噛みが出来ない。あまり触れられたがらないので、ごくたまに頭などを撫でているときには流血を覚悟する。2~3撫でで放さないと必ず噛まれる。抱っこなんてとても…なのだ。

 

さて、そんな飼い主の強い味方!いなば食品の[チャオちゅーる]。

これをもって彼らをコントロール下に置き、統治せんと目論む。

[ちゅーる]に堕ちない猫などいるはずはない。ふふふ、所詮は畜生風情、人類の叡知にひれ伏して媚びへつらえば良いのだ!脳の容量の違いを知れ!

 

が、いた。

 

ルウ、クンクン「…要らんわ」

モコ、クンクン「今要らないっス!」

モコまでも…あっけなく…

 

“万物の霊長”の敗北を…人間の傲りを…生命とは?宇宙とは?…

 

哲学者にもなり、世の不条理を知った。

 

これ以降、猫を統治するなんて考えを持たなくなった。自然に、自由に…

今、[ちゅーる]は食べてくれているが、決して“ガッついて”はいない。

 

ルウはほとんど鳴かない。その事がますますカリスマ性を増す。サビ柄神秘猫…

 

ルウの天下は続く。

 

しかし、苦節五年、ついにルウ懐柔の時が突然やってくる。あまりにもその威光が強く、易々と触れられなかったがゆえに気がつかなかった、猫飼いなら当然知っているあの…《尻トントン!》

たまたまそれを何気なくお見舞いしたら、ジャニス·ジョプリンばりのシャウトでハスキーな声を聴かせた。見つけたかも…探し求めて、ないものと諦めていた、ルウのGスポット

一生なつかない猫もいるという。

それが自らせがむようになったのだ。

「尻トントンしろ」と尻を向ける。ハスキーボイスと共に。

 

それを期にようやく我が猫園の民主化?が進み、ルウも徐々にだが“平猫”としての振る舞いになっていった。

 

七歳、二人で遊ぶことも増えたように思う。まだまだ元気。本当にありがたい。

狭い領地で申し訳ない。

 

シニアの入り口、あと最低15年死ねないか~!